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木上竜二のスイス遠征“達人調整ルポ”

木上竜二(きがみ りゅうじ)

運動総研専門達人調整員。運動総研にて、2011年よりゆる体操やゆるトレーニングに取り組むお客様を対象にした「達人調整個人施術」を開始、調整を受けた多くの方より支持される。トップアスリートへの達人調整に必要な専門知識・術技能力を備えた専門達人調整員の資格を認定され、現在はトップ若手歌舞伎役者やトップアスリートを中心に達人調整を施術。ゆるトレーニング歴は約15年。1998年より高岡英夫が主宰する極意武術協会に入門し、武術の稽古にも励んでいる。趣味は料理、歌を歌うこと。

木上竜二のスイス“ワクワク♪ニコニコルポ”
第2回(2013.1.15 掲載)


 2日目です。

 今日はチューリッヒからヨーロッパカップ開催地のジナル(Zinal)への移動です。

 ジナルはスイスの南西のほうで、チューリッヒから結構距離があるのですが、特急(InterCity)を使っていくと3時間ほどで着きます。スイスでは一部列車をのぞくと、特急料金はなく、全部普通の切符で乗れます。

  • 2013年達人調整ルポ
  • これから向かう先は、ヨーロッパカップ開催地の“ジナル”

 ホテルからチューリッヒ空港にシャトルバスで戻り、そこから列車に乗ります。今回はスケジュール上、移動がどうなるか読めないところがあったので、日本でスイスパスを購入しました。これは、ほぼすべての鉄道、バス、船舶などが乗り放題の切符で、値段的にだいぶお得なのもさることながら、私みたいな海外に不慣れな旅行者にとっては、わざわざ切符を買う煩わしさから開放してくれる便利なアイテムです。

 空港に着いて、切符売り場でスイスパスを有効にしてもらう手続きを完了したら出発です。ちなみにスイスの駅には改札というものがありません。チューリッヒ空港の地下にホームがあるのですが、空港ビルからエスカレーターで降りていくと、ホームに着いて、そのまま列車に乗れてしまいます。

  • 2013年達人調整ルポ
  • 空港と直接つながっているチューリッヒ空港駅
    ホーム壁面がカラフルに彩られた鮮やかな配色とデザイン

 切符がなくても乗れるのですが、見つかってしまった場合には、その場で80スイスフラン(2013年1月15日時点で日本円にして約7,700円に相当)の罰金だそうです。ですから、特急ともなると、しょっちゅう車内検札の係員が見回りにきます。

  • 2013年達人調整ルポ
  • 車内からはスイスの美しい景観が楽しめる

 チューリッヒから特急でベルン(Bern)、トゥーン(Thun)と経由して、長いトンネルを抜け、スイスの南側のフィスプ(Visp)駅に到着。

 チューリッヒ中央駅から銃を持ったスイス軍の兵士のグループが乗ってきたときにはちょっと驚きましたが、銃を持って列車で移動するのはそれほど珍しいことではないようで、他の乗客は皆、平然としていました。彼らとは降りる駅が一緒だったのですが、そのときに(おそらくアメリカ人と思われる)スノーボーダーの男性がスイス兵に話しかけていました。「その銃、撃つ練習とかしてんのかい?」、「もちろんですよ」、「(持っていたスノーボードを指して)俺の銃はこれだよ、HaHaHa!」というような会話をしておりました。

 フィスプで乗り換えて、20分弱で最寄りのシエル(Sierre)駅に着きます。ここからはバスです。早くから発達した郵便鉄道の流れを組む、黄色い車両のポストバス(Post Bus)に乗ります。これにもスイスパスで乗ることができます。スイスパス、非常に便利です。

 ヴィソワ(Vissoie)駅での一回の乗り換えを挟んで、ジナルの大会の日本チーム宿泊地である、グリモン(Grimentz)に向かいます。

  • 2013年達人調整ルポ
  • スイス南部の景色、バスの窓から眼前に広がる山々を一望

 ここからは本格的に「山」です。ポストバスがとにかくすごい曲がりくねった山道を登っていき、関東平野育ちであまり山にも登らない私としては、「なにこれ???すごく高いんだけど……」という感じです。道のすぐ脇が絶壁で、車高の高いバスから下を見ると、ガードレールは見えずに下の町が見えたりします。高所恐怖症の人はきついでしょう。ちなみに私は高所恐怖症ではないし、長年ゆるトレーニングに取り組んできたので、「地芯に比べると下の町のほうが圧倒的に浅い位置に感じられるなあ」などと思いながら眺めてました。

  • 2013年達人調整ルポ
  • すぐ脇が絶壁の曲がりくねった山道をバスが登っていく

 計1時間ほどのバスの旅もそんなこんなで楽しく過ごし、グリモンに到着。斜面にできたリゾート用の集落みたいな感じでしょうか。斜面にたくさんのロッジがあります。バス停から3分も歩くと、宿泊予定のホテルがありました。

 ホテルにて試合が終わった後の星選手と合流、ここからが調整師である自分との勝負の時間です。

 約一ヶ月ぶりに会った星選手は、身体の調子はまずまずでしたが、脳疲労がたまっており、表情が硬く脳が締まっているような感じを受けました。本人曰く、12月の途中からモチベーションが低下している、という話でした。

 先月調整をしたときの感じでは、最終日には数ヶ所を残してほぼいい状態になり、「これならある程度いけるのでは」という期待感を持ったのですが、一方で、調子よくなった身体がスキーの具体的な運動ときちんと噛み合えるのか、また身体がよくなり動けるようになった分、それに比例して脳疲労するのではないか、という2点の課題が気になるところでもありました。

 実際の試合でのパフォーマンスについて聞いたところ、12月の調整後の1回目の試合ではコースアウト、2回目の試合では転倒という結果でした。すでにブログにアップされていた映像は日本で見ていたのですが、今回映像を見ながらあらためて本人に解説してもらいました。

 自分はスキーに関しては素人でまったくやったことがありませんが、動き自体は調整前の試合よりも確実によくなっているのが感じられました。実際、2回目の試合のときは、本人もすごくいい調子だったとのことで、他の国のコーチからも「今の滑りはよかった」と言われたとのこと(そう言われることはめったにないそうです)。

 ただ、試合途中で脳疲労がかなりキツかったらしく、一瞬視界が消えて、転倒してしまったとのこと。クラゴンもルポでそのことについて触れていましたが、世界一流レベルのパフォーマンスともなると、状況によっては1分程度でも一気に凄まじい脳疲労状態に陥るという事実を、あらためて確認した次第でした。私が高岡先生にご指導いただいている極意武術協会の稽古や、極意上級徹修会のトレーニングでも、一瞬で脳疲労してしまうということがしばしばあるので実感としてよくわかるのですが、それを実際の試合で自ら実現してしまうというのはすごい集中力だと思います。

 その2回目の試合以降はモチベーションが徐々に低下し、調子もいま一つとのことでした。そこまで話を聞いてから、私はおそらく「1・2回目の試合での強度の脳疲労が取り切れておらず、その状態でその後も高水準の雪上トレーニングを続けたためにさらに脳疲労が蓄積していったんだろう」という推測をしました。

 なので今回は、脳疲労に効くゆる体操と達人調整を重点的に行うことにしました。

 午後に2時間、夜にゆる体操を含め1時間ちょっとの達人調整を行いました。最初は硬かった星選手の表情が、調整後、パアーッと明るくなりました。やはり相当脳疲労がたまっていたんだなあ、と感じました。

 明日は試合なので朝早くから調整を行う予定です。幸い、ベッドは非常に寝心地がいいので、自分も疲労を取り、ベストな状態に持っていくために、ゆっくり質のよい睡眠を取りたいと思います。

(2013年1月7日/グリモンにて)


第3回へ続く>>

木上竜二の調整報告(1月7日)



<15:30~17:30> 達人調整

・拘束背柱崩し
・座椅子背柱足底崩し
・拘束背芯崩し
・足先背芯崩し
・首頚開き
・手巾脳洗法
・肩甲押しほぐし
・肩包はがし
・腰背踵崩し
・側腰踵崩し
・外腿踵崩し
・腰背崩し
・仙波崩し
・屈膝腰仙回法
・前側腰崩し
・下腹渦巻崩し
・横臥回仙回崩法
・横臥外腿螺旋崩し
・側腰崩し
・側腰転子回法
・外腿崩し
・座椅子下裏腿崩し
・下腿振波
・脛腿崩し
・土踏軸乗芯
・吊脚閉側芯崩し
・脊椎通し
・裏転子促神法
・ウナ打通法


<21:00~21:15> ゆる体操指導

<21:15~22:15> 達人調整

・拘束背柱崩し
・拘束背芯崩し
・足先背芯崩し
・首頚開き
・手巾脳洗法
・肩甲押しほぐし
・肩甲はがし
・肩包はがし
・腰背踵崩し
・側腰踵崩し
・外腿踵崩し
・腰背崩し
・仙波崩し
・横臥回仙回崩法
・下腿振波
・脛腿崩し
・吊脚閉側芯崩し
・脊椎通し
・裏転子促神法
・ウナ打通法


木上竜二(1月7日/グリモンにて)

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