ホーム > 2010年ニュルブルクリンクレースを語る-Part1 高岡英夫×クラゴン×藤田竜太鼎談 「貫くセンター、目覚めよ細胞! “クラゴン”無心のフリードライビング(7)」

2010年ニュルブルクリンクレースを語る-Part1 高岡英夫×クラゴン×藤田竜太鼎談

  • 高岡英夫
  • 高岡英夫
    運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長・推進委員。東京大学、同大学院教育学研究科卒。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、人間の高度能力と身体意識の研究にたずさわる。オリンピック選手、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」を開発。
  • クラゴン
  • クラゴン
  • レーシングドライバーとして世界最高峰のサーキット、ドイツ・ニュルブルクリンクでのレースで活躍するなど、専門筋をうならせる傍ら、ドラテク鍛練場クラゴン部屋を主宰し、一般ドライバーの運転技術向上にも取り組む。「クラゴン」は日本自動車連盟に正式に登録したドライバー名。ゆるトレーニング歴は約10年。2010年9月のVLNにポルシェでの参戦が決定。
  • 藤田竜太
  • 藤田竜太
  • 自動車体感研究所(ドライビング・プレジャー・ラボラトリー)所長。自動車専門誌の編集部員を経て、モータリング・ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。ゆるトレーニング歴も10年以上で、某武道の指導者という顔もある。

第7回 貫くセンター、目覚めよ細胞! “クラゴン”無心のフリードライビング(7) (2010.10.19 掲載)

「他者中心運動構造」では、顕在意識をまったく使わなくなる

高岡 「他者中心運動構造」というのは、他者つまり武蔵なら剣、レーシングドライバーならクルマ、あるいはタイヤの事情や特性、重心に合わせて自分が動く運動のことをいうんだよ。
 でもこのように説明すると、「えっ、でもそれって、道具の重心なり何なりを自分で考えたうえで、動くってことですか」って質問されることが多いんだけど、正しい「他者中心運動構造」では、そうした脳の使い方はまったくしないんだ。
 ではどういうものなのか、意識論で説明すると、顕在意識、潜在意識、無意識のなかで、顕在意識はまったく使わない。

藤田 顕在意識をまったく使わないといわれると、なかなかピンと来ないんですよね。

高岡 このまったく使わないというのが、どれぐらい使わないのかというと、おそらくクラゴンの場合で、「自ら意思をもってクルマを運転してるんですよね?」と聞かれたら、「ん? そういわれてみれば、運転しようとは思っているかも……」といった程度じゃないのかな。

クラゴン そうですね。最近ではどこで具体的にどういう操作をしようという気持ちは、どんどんなくなってきています。どういう風にしようというより、「いまはこういう風になっているんだから、こうしよう」って感じですかね。

藤田 他に選びようがないところまで来ているから、自然とそういう操作をするしかないんだろうね。

クラゴン ええ。他に選びようがないから「しょうがないからこうステアリングを切るとかブレーキを踏むか」ってな感じです(笑)。そうした操作の繰り返しが、修正のない走りにつながっているんだと思います。

藤田 「だってコレしかないんだもん」って感じだよね。

高岡 それがどうしてわかるのかというと、ゆるみきってくれば、勝手にわかるものなんだよね。

藤田 身体がオートマチック化してくるってことですか。

高岡 いや、顕在意識に上らないというだけで、潜在意識下、そしてより無意識過程での情報処理能力が盛んになってくるという話だよ。

クラゴン そういわれてみると、今回の24時間レースの時は、本当の話「タイムを出そう」という気持ちはありませんでした。もうそれなりに(クルマなりに)乗るしかないと思っていたし、そうして乗ればタイムは自然と出ますんで……。もうタイムを自分で出すという感覚はゼロでした。ひとつひとつのコーナーというか、1秒ごとにいまはこうだから、こうして……といった具合に1周回ってくると、ピットでチームが「タイムが出た」って喜んでいるような状況でして(笑)。

高岡 そういうことなんだよ。

  • 6位入賞に導いたクラゴンの好タイムは、
    「他者中心運動構造」のドライビング(=フリードライビング)によるもの

「快適肩甲骨開発法」で、ハンサムになりながら、ステアリングワークも向上する!?

藤田 ところで、「剣聖の剣」以外の講座の話も聞きたいんだけれど。

クラゴン 「剣聖の剣」と同じぐらいインパクトがあったのは、「快適肩甲骨開発法」が強烈でしたね。あれでステアリング捌きが一新しました。
あの講座を受講する前と後とでは、明らかにステアリングワークが変わりましたから。

藤田 それを受講したのっていつだっけ?

クラゴン 今年の5月4日です。

藤田 24時間レースの本番まで2週間もない段階で、そんな劇的な変化があったんだ。
(※今年のニュル24時間レースの決勝は、5月15日スタート、翌16日フィニッシュ)

高岡 あの講座はおすすめだよ。女性はきれいになっちゃうし(笑)。真面目な話、レーシングドライバーがより快適ないい走りができるようになってしまう講座で、女性が目の前でより美しくなっていってしまうんだから。
 だからけっきょくこれっきゃないんだよ。なんといってもすべての本質なんだから。
 いっとくけど、クラゴンだって講座の最中に女性達と同じようにきれいになっていったんだから。もっとも、一緒に受講していた人たちは、そのきれいになったクラゴンを見ても、ほとんど感動していなかったみたいだけどな(笑)。

クラゴン そうでしたか。それはまったく自覚していませんでした(笑)。自分の中でよもやボク自身が「快適肩甲骨開発法」を受講して、きれいになるとは思ってもみなかったんで。

  • 「快適肩甲骨開発法」を受講して、ステアリング捌きが一新すると同時に
    きれいになっていたなんて!?と驚きを隠せないクラゴン

高岡 はっはっは。でもハンサムになりながら、ステアリングを握ったら、どんどん揺動化していけるんだよ。そこが肝心なところなんだけどね。
 だからこそ、老若男女、みんなに取り組んでもらいたいんだよね。

真に本質に到達する方法をもってすれば、何かを犠牲にする必要はない

藤田 なるほど。クラゴンのドライビングスキルが向上したのも、知らない間にハンサムになったのも(笑)、別に悪魔に魂を売り渡したからではなかったんですね。
 世の中なんでも、一得一失というか、とかくトレードオフ(一方の利益が他方の損失になるような関係)になりがちじゃないですか。でも身心の開発はゼロサム(損益を合算するとゼロになる状態)ではないんですね。

高岡 そう、世の中の多くはトレードオフになりがちなんだけど、真に本質に到達する方法をもってすれば、何かを犠牲にする必要はないんだよ。

藤田 顔が不細工になる代わりに、速くなるとかっていうのなら、ありがちですが。

高岡 醜くなるというのはともかく、すごい形相をして速くなるとかね。
 でも、本質力を高めていくトレーニングに取り組めば、ハンサムになりながら、ラクで、いい顔になりながら、速くなっていけるんだよ。
 しかもクラゴンなんか、チームから「どうにか1周につき1分縮めてきて欲しい」といわれたのに対し、1分30秒も縮めちゃったわけでしょう。それも「タイムを縮めよう」などとはまったく思わずに。
 当然のことながらそのときは、すごくゆるんでじつにいい顔をしていたと思うよ。

藤田 残念ながら夜間の走行時間で、車載カメラにもクラゴンの後頭部しか映っていないので、その表情を目撃した人は誰もいないと思いますが(笑)。

高岡 そんなことはないよ。もう一度、さっきの車載映像(※)を見直してご覧よ。車載カメラで映っているクラゴンの右半身を見ただけでも、じつにいい顔をしているじゃないか。肩にしろ、上腕にしろ、前腕にしろ、かなりゆるんで肩なんか素敵な肩をしているだろ。
 そこなんだよ、大事なことは。

※2010年5月 ニュル24時間レース、決勝中のクラゴンの車載映像は、第5回 貫くセンター、目覚めよ細胞! “クラゴン”無心のフリードライビング(5) でご覧になれます。

  • ゆるゆるにゆるんだ肩や腕の動きがわかるクラゴンの車載映像

藤田 一昔前とちがって、いまなら国内外のいろんなドライバーのニュルでの車載映像が入手できるので、興味がある方はクラゴンと、他のドライバーの走りというか、身体の使い方をぜひ見比べてみて欲しいですね。

高岡 そっち方面に関心がある人は、見比べてみると本当に気がつくことが沢山あるはずだよ。

2回3回と複数回受講することでお宝度がアップしてくる

クラゴン それにしても「快適肩甲骨開発法」はためになりました。
 なにより「人間て、変わるんだな」と実感できたことが収穫でした。

高岡 目の前でみんなも自分も変わっていくからね。そしてそれを持って帰って、クラゴンの場合はレース本番で自分を変えてくれるものにつながっていくんだから、こんなにいいものはないよね。

クラゴン まったくです。それからもうひとつ気がついたことがあるんですが、これは個々の講座云々という話ではなくって、全般的なことなんですが、同じ講座を複数回受講させていただくと、また理解と体感のアングルも深まりもまったく違うことがわかって、それがとってもおもしろい発見でした。
 ボクも以前はひとつの講座を受講すると、次はまだ受講していない講座を受講するようにしていたんですが、そうやっていくつかの講座を受講して、それなりに上達したあと、もう一度以前受講した講座を受けてみると、上達の度合いが初回の時とぜんぜん違うんですよね。

高岡 それは当然ぜんぜん違うよ。教えていることは「あなたの本質なんだよ」ということだよ。1回参加しただけで自分の本質の伸び代がいきなりカラッポになるわけがないでしょう。

クラゴン やっぱりそういうものなんですね。それともうひとつおもしろかったのは、最初に受講した際に、なんとなくできたつもりになってスルーしていた部分で、2回目、3回目は引っかかるんです。それではじめて「前回は、これができていなかったのか」と気づくんですよ。でもそのできなかった部分に真剣に取り組んで克服すると、グッと上達してくるんですよね。それが大きな発見だったというか、すごく勉強になりました。

高岡 この際だから本当のことをいってしまうと、私がやっているすべての講座の中の、あらゆるメソッドがあるでしょ。その全メソッドのどれをとっても、現時点でまともにというか、私の水準でできている人はまだひとりもいないんだよ。
 だからどのメソッドでも何度でも受けてもらって、勉強してもらう必要があるんだよ。それは勉強する価値があるというのではなく、必要不可欠なことなんだ。
 それも2回、3回といわず、5回も10回も30回も受講してもいいわけだ。
 例えば、「トップ・センター」などは比較的複数回受講する人が多いけど、それでもやはり2回受講するより1回止まりという人のほうが圧倒的に多いし、いわんや3回、4回と受講する人は稀だよね。
 そういう現状を目にすると、「みんな、わかってないな~」っていいたくなるのが、本音なんだけれどね。
 実際のところ、1回だけで掴めることはたかが知れていて、2回3回と受講することで、どんどん黄金を掘り当てていけるのにね。

  • 「トップ・センター」をはじめとした運動総研講座は、
    複数回受講することでますます新しい発見と感動がある

藤田 もっと掘り下げたところに、本当のお宝は隠れているものなんですね。

高岡 そうですよ。1回目でつかめるものなんて、まだまだ黄金とはいえないよ。極端にいえば鉛ぐらいなものでしょう。とはいえ、鉛だっていろいろ役には立つわけだから、まったく無意味ではないんだけどね。
 でもそれが2回目、3回目、4回目…となってくると、だんだん銅になり、銀になり、黄金になり、プラチナになり、ダイヤモンドになり、といった具合にお宝度がアップしてくるんだよ。

クラゴン もともとそういうものだったんですね。

私が真剣になって指導する場に何度も足を運べば、必ず発見がある

高岡 せっかくだから、もっとすごい話をしておこうか。
 そのトップ・センターの講座に何十回も出ている人は、じつは私しかいないんだよ!

クラゴン・藤田 なるほど(大笑)!

高岡 もちろん講座中は指導がメインなので、自分の練習はできないんだけど、ちょっとでもみんなに実演を見せながら説明したり、デモンストレーションをしながらリードしていくようなときは、ものすごく生き生きとやらせてもらっています。
 それはどれぐらいのレベルでやっているかというと、他でもない自分にとって最大に役立つように一所懸命やってるんだよ。
 ただ単にお手本で見せるだけなら、そこまで本気でやることもないんだけど、それじゃあもったいないだろう。
 せっかくトップ・センターの時間を設けて、みんなと一緒に取り組んでいるんだから、自分だって上達しない手はないよね。
 そうやって取り組んでいるおかげで、じつは講座のなかでデモンストレーション中に、新しい発見をいくらでもしているんだよ。例えばトップ・センターの講座で軸タンブリングをやっているとき、「あっ、ここはこの前よりいい具合で通るようになった」とか、地芯に近いところでのポジションが、わずか数ミリ単位でずれていて、その修正が自分の課題になっていたときに、講座中、指導しながら直ってしまったとか。
 そんなことがじつはしょっちゅうあるんだよ。
 だから、あえて少しだけ先達として偉そうな言い方をさせてもらうと、開発者である私自身が真剣になってデモンストレーションをして、みんなをリードしているんだから、その場に何度も何度も足を運んで、一緒にトレーニングすべきだよ。
 必ず発見があるはずなんだから。

クラゴン 高岡先生ですら、日々発見があるんだとしたら、ボクたちなんて発見し放題ですよね。

高岡 そうだよ。だから大判小判がザックサックだっていってるじゃないか。実際、何度も受講してくれる人たちは、そうやっていろいろ発見してくれるんだけどね。

同じ講座に複数回出るときは、初めて受けるつもりで

高岡 もうひとつ、おまけにとってもいいアドバイスをしておくと、同じ講座に複数回出るときは、初めて受けるつもりで受講することだね。

藤田 「ああ、これはこの前やったあのやつだ」という気持ちで受けるのは、厳禁だということですね。

高岡 いつも言っていることだけど、何が上達の妨げになるかといったら、「ああ、このメソッドなら知っている」っていう気持ちなんだよ。そういっちゃあなんだけど、1度ぐらい受講したことがある人の「知ってる」なんて、ホントにたかが知れているんだから。
 私ぐらいわかってきても、まだまだわかっていないことのほうが多いんだから。
 軸タンブリングひとつとったって、これから100歳まで取り組んだとしても、死ぬ前になって、「やっぱり、巨大な牙城を攻めきれないで、この一生を終えるのか~」と思うほど奥深いものがあるのだから。
 その手前にあるいろいろなメソッドにしても、私にしても汲めども尽きぬものなわけだし。
 仕事をしなくていいのなら、目が覚めている間中ずっと鍛錬だけし続けていたいというのが、いつわざる気持ちなんだけどね。

クラゴン・藤田 (笑)。

  • 人は誰もがとてつもない巨大な可能性を身体と意識に秘めている

高岡 そうしたら、ものすごい快適な自分に出会えるんだろうな~。

藤田 発見ということでは、先日の身体意識錬成道場の際に教わった、「棒上軸乗芯」のコツも、グッとくるものがありました。

高岡 グッとくるものがあっただろう。

藤田 たったアレだけのことで、結果が大きく変わってくるので、本当に目が覚める思いでした。

高岡 そうした発見が、何百回、何千回、何万回となくあるんだよ。だからやっぱり人の存在というのは、それだけすばらしいってことだよね。誰もがとてつもないほど巨大な可能性を、身体と意識に秘めているわけだから。
 しかも神秘系、超能力系ではなく、通常能力の範囲で無限の可能性があるわけだから。

クラゴン だからボクにも実感としての希望があるんですね。とくにボクのような……。

第8回(2010.10.26掲載予定、ついにクライマックスか!?)へつづく>>

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