ホーム > 日米政治家の本質力を解く! 第14回 吉田茂(3)

日米政治家の本質力を解く!

鳩山、オバマ、小沢、麻生…、最先端の身体意識理論で分析する現代日米政治家の真の実力とは!?

  • 高岡英夫
  • 高岡英夫[語り手]
  • 運動科学者。「ゆる」開発者。現在、運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長・推進委員。東京大学、同大学院教育学研究科卒。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、オリンピック選手、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」「ゆる呼吸法」「ゆるウォーク」「ゆるスキー」「歌ゆる」を開発。一流スポーツ選手から主婦・高齢者や運動嫌いの人まで、多くの人々に支持されている。大学・病院・企業などの研究機関と共同研究を進める一方、地方公共団体の健康増進計画での運動療法責任者も務める。ビデオ、DVD多数、著書は80冊を越える。
  • 松井浩
  • 松井浩[聞き手]
  • 早稲田大学第一文学部在学中から、フリーライターとして仕事を始め、1986年から3年間「週刊文春」記者。その後「Number」で連載を始めたのをきっかけに取材対象をスポーツ中心にする。テーマは「天才スポーツ選手とは、どんな人たちか」。著書は「高岡英夫は語る すべてはゆるむこと」(小学館文庫)「打撃の神様 榎本喜八伝」(講談社)等。高岡英夫との共著に「サッカー世界一になりたい人だけが読む本」「ワールドクラスになるためのサッカートレーニング」「サッカー日本代表が世界を制する日」(いずれもメディアファクトリー)、「インコースを打て」(講談社)等がある。

第14回 吉田茂(3)(2009.11.18 掲載)

――前回のお話では、吉田茂の政治家として、人間としてのスケールの大きさは、「パラボラ」という身体意識が極めて発達しているからということでした。その「パラボラ」は、人々の思いを集合的に集める働きがあるということで、これは、今年3月に分析してもらったオバマ大統領にもありました。

※「身体意識」とは、高岡が発見した身体に形成される潜在意識のことであり、視聴覚的意識に対する「体性感覚的意識」の学術的省略表現である。『センター・体軸・正中線』(ベースボール・マガジン社)のはじめに(1ページ~)、序章(17ページ~)や『身体意識を鍛える』(青春出版社)の第2章「達人たちの〝身体づかい〟7つの極意を知る」(45ページ~)で詳しく解説しています。

高岡 でも、オバマ大統領のパラボラは、吉田茂と比べると、もっともっと薄いものです。実際、現在のアメリカ国民と、かつて吉田茂が日本国民と取り結んだような強力な関係が築けているかといえば、そうではないですね。

――ノーベル平和賞を受賞しましたが、それには、「核なき世界を目指す」と理想を語るオバマ大統領の今後の行動に期待するという意味があると言われています。つまり、他国との交渉においても、まだ成果が出ているとはいえませんね。

吉田茂をみると、国と国との交渉は当事者の身体意識の構造(DS)にかかっている、ということがよくわかる

高岡 当然でしょうね。身体意識の観点から見れば、国と国との交渉は、その交渉を行う個人の身体意識の構造(ディレクト・システム 以下DS)やその強さにかかっているといえるからです。たとえば、昭和20年代の講和交渉も、こういうDSを持った吉田茂という人物がいなかったら、どうなっていたかと考えてみるのも、面白いと思いますよ。

――あの時代は、国際的には東西冷戦が深刻になって、朝鮮戦争も勃発してと、もう大変な時代でしたからね。

高岡 現代の麻生太郎や福田康雄あたりが、あの時代にいても何もできないですよ。

――国民の信頼もまったく得られず、交渉においても右往左往するだけだったでしょうね。それに比べて、吉田茂は、本当にすさまじい交渉をしています。日本の将来を一人で背負って交渉しながら、なおかつ、アメリカに対して日本に有利な成果を引き出しました。しかも、日本に有利な条件と引き換えに、米軍の駐留を許す日米安保条約の締結については、周りにも一切秘密にしたということです。そのため、日米安保条約の調印式には、その責任の全てを自らが背負うため、たった一人で臨みました。ものすごい緊張感の伝わってくる話ですよね。現在の海上給油の問題とか、普天間基地の交渉とか、重要な政治課題ではあるんですけど、吉田の行った講和交渉と比べたら、スケールがまったく違いますからね。もたもたしている場合じゃないだろうと思ってしまいます。

高岡 そう考えると、国と国との交渉は、いかに当事者のDSと、その強さにかかっているかがよく分かると思います。

次回へ続く>>

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