ホーム > 日米政治家の本質力を解く! 第5回 麻生太郎(1)

日米政治家の本質力を解く!

鳩山、オバマ、小沢、麻生…、最先端の身体意識理論で分析する現代日米政治家の真の実力とは!?

  • 高岡英夫
  • 高岡英夫[語り手]
  • 運動科学者。「ゆる」開発者。現在、運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長・推進委員。東京大学、同大学院教育学研究科卒。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、オリンピック選手、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」「ゆる呼吸法」「ゆるウォーク」「ゆるスキー」「歌ゆる」を開発。一流スポーツ選手から主婦・高齢者や運動嫌いの人まで、多くの人々に支持されている。大学・病院・企業などの研究機関と共同研究を進める一方、地方公共団体の健康増進計画での運動療法責任者も務める。ビデオ、DVD多数、著書は80冊を越える。
  • 松井浩
  • 松井浩[聞き手]
  • 早稲田大学第一文学部在学中から、フリーライターとして仕事を始め、1986年から3年間「週刊文春」記者。その後「Number」で連載を始めたのをきっかけに取材対象をスポーツ中心にする。テーマは「天才スポーツ選手とは、どんな人たちか」。著書は「高岡英夫は語る すべてはゆるむこと」(小学館文庫)「打撃の神様 榎本喜八伝」(講談社)等。高岡英夫との共著に「サッカー世界一になりたい人だけが読む本」「ワールドクラスになるためのサッカートレーニング」「サッカー日本代表が世界を制する日」(いずれもメディアファクトリー)、「インコースを打て」(講談社)等がある。

第5回 麻生太郎(1)(2009.04.14 掲載/2009.10.13 DS図公開)

  • 麻生太郎のDS図
  • 麻生太郎のDS図
  • クリックすると拡大画像がご覧になれます。

――麻生さんは、ものすごく支持率の低い首相ですが、衆議院議員としては当選を9回も重ね、昨年9月に自民党総裁に選ばれた時も、党内ではかなり期待されていました。そういう意味では、前回の小沢一郎民主党代表と同じで、政治家の資質の一つである「パーム」という身体意識は発達しているのでしょうね。

※「身体意識」とは、高岡が発見した身体に形成される潜在意識のことであり、視聴覚的意識に対する「体性感覚的意識」の学術的省略表現である。『センター・体軸・正中線』(ベースボール・マガジン社)のはじめに(1ページ~)、序章(17ページ~)や『身体意識を鍛える』(青春出版社)の第2章「達人たちの〝身体づかい〟7つの極意を知る」(45ページ~)で詳しく解説しています。

優秀なリーダーに欠かせないセンターと3丹田はまったく弱い

高岡 もちろん、発達しています。「パーム」というのは、掌を中心に形成されて、人の心を温かく包む身体意識のことです。政治家や教育者に欠かせないもので、人を自分の方に抱き寄せるような温かさを伝えたり、人の心を温かくつかむという特徴があります。小沢さんのところでも言いましたが、政治家はよく握手をすることで、その人の心をつかみます。「パーム」というのは、そうした状況を本質的に支えているパワーの源でもありますから、当然、麻生さんにも発達していますよ。

――ところが、これも小沢さんと同じで、優れたリーダーとして欠かすことのできない身体意識であるセンターと3丹田(下丹田=意・支え、中丹田=情、上丹田=知)はないように見えますが。

高岡 まったく同じ状況ですね。

――まあ、これだけ支持率が低いわけですから、麻生さんがリーダーとしての資質に欠けることは、国民もしっかり見抜いていますね。

高岡 しかし、現実には、麻生さんが首相に選ばれて、すでに半年以上も続いているわけです。どんなに頼りなく見えても一国の首相の座にあり続けるというのは大変なことですから、そうなると、身体意識の観点から見ても、何らかの理由が必ずあるはずなんですね。そこで、麻生首相の半年を振り返ってみると、まさに、さまざまな問題で批判されたり、叩かれ続けてきていますよね。

――漢字の読み違いから、給付金をもらうのはさもしいといった舌禍事件、さらには中川昭一財務大臣のヘベレケ会見まで実にいろいろありました。

周囲からの激しい攻撃に耐えられるのは、身体の左側に形成された身体意識の壁に寄りかかれるから

高岡 そうですよね。首相になって以来、まともな批判はもちろん、誹謗中傷の類も含めて実にさまざまな攻撃を受けながら、それでも首相の座に留まることができています。そのためには、周囲からのさまざまな攻撃に対する耐久性が何にもまして必要になりますね。批判されるたびにグラグラされたら、自公の議員ですら支え切れないですからね。また、首相としては、まっとうな政策論争に対してもぐらついてはいけないわけでしょう。その場合、優秀なリーダーであればセンターと下丹田が発達していて、どんなに攻撃されても、軸がブレたりにぐらついたりすることもない。あらゆる攻撃に対する耐久力も万全なわけです。

――しかし、麻生さんの場合は、そのセンターと下丹田が弱いわけですね。

高岡 そうなんです。麻生さんの場合、その代わりをしているのが、身体の左後側に形成された壁ですね。非常に固くて、強い面状の身体意識の装置が形成されています。下半身の方が強いのですが、その壁は頭から顔、首、肩から脇にかけても形成されています。つまり、麻生さんは、周りから攻撃されると、潜在意識の中で、身体の左側にある壁に寄り掛かるのです。そうすることで、ぐらつかないためのバックボーンを得ようとしているんですね。

――なるほど。野球のバッティングでも、右打者に「身体の左側に壁を意識して」と指導をする人がいますが、麻生首相は、それと似たような潜在意識の壁に寄りかかりながら、さまざまな攻撃に耐えているんですね。

身体の左側に壁状の身体意識の装置があるから、どんな大変な問題でも「問題ないです」とあっさり終らせることができる

高岡 そして、その壁の中には、右から左に向かう身体意識の流れがあるんですね。その身体意識の流れで周囲からの攻撃を片っ端からからめとり、左側の壁にぶつけることで自己処理してしまうんですね。

――では、そういう身体意識の働きが、具体的には、麻生さんのどのような行動に現れているのですか。

高岡 たとえば、国民が「これは、まずいよな」と思うような大変な問題が起きて、「麻生首相はどう釈明するのだろう」と思っていても、記者の質問に「いや、まったく問題ないと思います」という類の発言だけで終わらせてしまうことがよくあるでしょう。それをさせている身体意識なんですよ。

――そういえば、麻生首相は、そんな受け答えをしたことが何度もありますね。

高岡 「いや、問題はないです」と、実にあっさり言い切ってしまいますよね。ニュアンスとしては、「もちろん、私は、その問題についてわかってますよ。でも、問題ないでしょう。わかっている自分がいうのだから、間違いなく問題ないんですよ!!」という感じです。普通に考えれば、「問題ない」と言い切るだけの根拠や理由を示して、たくさんの話をしなければならないはずなのに、いきなり「無」にしてしまうんです。1回目は「えっ」と思って、こんなことは1回しか通用しないだろうと思うんですけど、すでにこのパターンを2回も、3回も、4回も繰りかえしてきました。うっかりすると、国民の側も「あんまり大した問題じゃないのかな」と思わされちゃうんですね。

――確かに、他の首相なら大問題となっているような問題でも、麻生首相にかかると、「問題ないでしょう」となりますものね。そうか。それが、麻生政権がなんとかもっている大きな理由なんですね。政治的な要因はさまざまあるにせよ、他の首相でこれだけ大きな問題が続発していて支持率も急落すれば、さすがに首相下ろしが始まったり、福田康夫前首相のように「やーめた」と投げ出してしまうでしょう。それが、国民も、なんとなく“麻生流”に慣れたような状態になっているのが、とても不思議だったんですが、そのように解説して頂くと、なるほどと納得できますね。


▲このページの先頭に戻る