ホーム > 米露首脳の本質を身体意識理論で解き明かす - ドナルド・トランプ(2)

関連情報

【身体意識に関する本】

  • 『「ゆる」身体論と最高の自分になる食事』
    河出書房新社
  • 『勝利をよぶ身体』
    講談社
  • 『体の軸・心の軸・生き方の軸』
    ベースボール・マガジン社
  • 『ゆるめて・めざめて「幸せな体」をつくる』
    サンマーク出版
  • 『からだにはココロがある
    ~丹田、センター、身体意識の謎を解く~』
    講談社
  • 『「軸」と「ハラ」を鍛えれば、必ず強くなる!』
    青春出版社
  • 『上丹田・中丹田・下丹田』
    ベースボール・マガジン社
  • 『決定版 身体意識を鍛える』
    青春出版社
  • 『丹田・肚・スタマック』
    ベースボール・マガジン社
  • 『合気・奇跡の解読』
    ベースボール・マガジン社
  • 『図解トレーニング 身体意識を鍛える』
    青春出版社
  • 『DSが解く達人のメカニズム』
  • BABジャパン
  • 『スーパースターその極意のメカニズム』
  • 総合法令出版
  • 『極意と人間』
  • BABジャパン
  • 『天才の証明』
  • 恵雅堂出版
  • 『意識のかたち』
  • 講談社
  • 『高岡英夫の極意要談』
  • BABジャパン

【身体意識図】

米露首脳の本質を身体意識理論で解き明かす

  • 高岡英夫
  • 高岡英夫[語り手]

     運動科学者、高度能力学者、「ゆる」開発者。運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長。東京大学卒業後、同大学院教育学研究科を修了。

     東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、人間の高度能力と身体意識の研究にたずさわる。オリンピック選手、企業経営者、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」をはじめ「身体意識開発法」「総合呼吸法」「ゆるケアサイズ」など、多くの「YURU PRACTICE(ゆるプラクティス)」を開発。

     運動総研主催の各種講座・教室で広く公開。一流スポーツ選手から主婦、高齢者や運動嫌いの人まで、多くの人々に支持されている。地方公共団体の健康増進計画などにおける運動療法責任者もつとめる。東日本大震災後は復興支援のため、ゆる体操プロジェクトを指揮し、自らも被災地で指導に取り組む。

     著書は『究極の身体』(講談社)など100冊を超える。

  • 松井浩[聞き手]

     早稲田大学第一文学部在学中から、フリーライターとして仕事を始め、1986年から3年間「週刊文春」記者。その後「Number」で連載を始めたのをきっかけに取材対象をスポーツ中心にする。

     テーマは「天才スポーツ選手とは、どんな人たちか」。著書は『高岡英夫は語る すべてはゆるむこと』(小学館文庫)、『打撃の神様 榎本喜八伝』(講談社)等。高岡英夫との共著に『日本人が世界一になるためのサッカーゆるトレーニング55』(KADOKAWA)、『サッカー世界一になりたい人だけが読む本』、『ワールドクラスになるためのサッカートレーニング』、『サッカー日本代表が世界を制する日』(いずれもメディアファクトリー)、『インコースを打て』(講談社)等がある。

  • 高岡英夫

ドナルド・トランプ(2)(2017.04.07 掲載)

――前回はトランプ大統領が政治家というより「戦闘者」の身体意識をしていて、センターと上丹田の欠如、中丹田のメッシュ構造など、このままの身体意識では政治家として困難な課題を真に解決していくのは難しい、というお話でしたが、今回も引き続き、身体意識から見た政治家としての資質について迫ってみたいと思います。

パンチでいえば鋭いが、重みはない

高岡 大統領に当選する人ですから、人々を情熱的に掌握する「パーム(手から腕を囲むように形成されるBA=身体意識)」は強いんです。けれど、あまり大きくはないですね。超大国の指導者としては、平均的なクラスですね。

 この人の「パーム」の構造は、2重構造をしていて裏側にさらに「剛腕パーム」というのがあります。人や組織を強引に自分の思い通りにさせていく剛腕とか、辣腕といわれる人物に見られるBAです。トランプの場合は、それが大変に鋭いんですが、本当の重みは乏しいんです。そのため、周りの者も最初のうちはその鋭さに瞬時に従わなきゃと反応するんですけど、長くは続かないんですね。格闘技でも鋭いパンチって、最初に「おっ」とは思うじゃないですか。

――たとえばフォードやトヨタが、トランプの批判を受けてメキシコ工場の建設計画をアッという間に撤廃したのは、その鋭いパンチに反応したものですね。

高岡 まさにそれです。典型的にシャープな、鋭い剛腕なんです。普通は、あれほどの巨大企業が計画を簡単に撤回したりしないんですが、トランプのようなBAを持った人物が発言すると一瞬で反応する企業も出てくるんですよ。でも、パンチは重くないと利かないのと一緒で、世の中のことは一日や二日で何とかなるもんじゃないですから、何か月もあるいは何年も時間が経つと、まったく言うことを聞かなくなったりします。

――トランプの剛腕もいつまで続くか、注目ですね。

強烈な裏転子で突っ走り、不動産王ばかりか大統領にまで上り詰めた

高岡 次に裏転子を見て下さい。強烈でしょう。若くして親から不動産会社を受け継いで全米の不動産王になりましたが、短い間に不動産王にまでなれた根本の装置はこれですよ。強烈な前進力で突っ走ったんですね。

 商売そのものは、そんなに上手な方じゃないと思いますね。たとえばマイクロソフトのビル・ゲイツの方がよほどうまい。トランプよりはるかにセンターの細径軸が通っているし、上中下の三丹田もきちんと揃っている。そのうえで巨大で整ったリバースをもって、大衆や社会の動向や興味などをたくみに捉えながらやってきた。それに比べてトランプはものすごい突進力、行動力でここまでやってきたんですね。

――トランプの親はニューヨークのクイーンズとブルックリンという地区で家賃の統制管理された住宅の建設を手がけていました。トランプの最初の仕事が家賃の取り立てで、滞納者には機嫌が悪いと何をするかわからないといった危ない人もいたそうです。危険だし、そんなに儲からないので、トランプ自身はもっと大きな仕事をしたいと思っていたようです。

 その後、デベロッパー(宅地開発業者)が破産したために競売にかけられていた住宅団地を安く落札し、家賃滞納者なんかはどんどん追い出す一方、中流家庭の人たちの好みにリニューアルして売り出すという方法でのし上がったようです。それから商業ビルやホテル、カジノに手を出して不動産王になりますが、今回、大統領になれたのもまさに強烈な「裏転子」がもたらす突進力の賜物なんでしょうね。もともと民主党に属していてクリントン夫妻にも献金していたのが、大統領になるためだけに共和党に鞍替えして突き進んで来たと言われるのも、うなずけます。

高岡 この人にしてみれば、不動産王では納まりきれない根深い欲動があったということですよ。何しろ、生まれつきこれほどに激烈な「裏転子」の才能を持った人物は、世界のトップクラスの人間たちの中でも極めて稀ですからね。

トランプは芯に響かない、脳天すっからかん人間の典型

――先ほど話に出たセンターも、ややこしい通り方をしていますね。

高岡 本当に難しいセンターの通り方ですね。くり返しになりますが、大所高所に立って、なおかつ正確、ち密な認識&判断力を支える「細径軸」はほとんどないんです。一方「中径軸」はしっかり通っていて、「大径軸」も部分的に通っていて、上と下を見るとロート状に広がっている。

 「中径軸」には、「細径軸」を他からの攻撃・侵害から守り、そのすべての機能に余裕を与え、正確、精密にして円滑かつ充全に働かせる働きがありますが、中心となる「細径軸」がなくて「中径軸」だけがこれだけ発達すると、まさしく「芯に響かない人間」になってしまうんですよ。「中径軸」は外からの攻撃的もしくは批判的な情報や刺激に反応しすぎず、アバウトに構えていられるという機能を持っていますからね。

 普通は、猛烈な抗議が来て自分の間違った部分を適確に指摘されたら、「やっぱりそうだよな」とか、「なるほどまずいよね」とか反省も含めた思いがよぎるわけですけど、トランプの場合、そういう思いになることはないですね。「芯に響かない」という人間の典型的な例です。このままBA構造が変らなければ、史上最も混乱を巻き起こした大統領として終わる可能性が高いけれど、そうなっても「芯には響かない」でしょうね。

――そんな状態になっても、あっけらかんとしていられるんですか。

高岡 あっけらかんですよ。中径軸がさらにロート状になった大径軸に囲まれているから、こうなると脳天すっからかんのような状態でいられるんです。といっても、現実には脳天すっからかんじゃないですよ。本人が1兆円以上と主張する莫大な個人資産を築いた人だから、ズル賢さも含めて必要な知恵も働くでしょう。だけど、同時に脳天すっからかんと同じ心理状態でいられる人なんですよ。だから恐ろしいんです。心配になっちゃうような差別的言動も、このロートがあるのでヘッチャラでできてしまうんです。

――なるほど脳天すっからかんでいられるから、通訳をする人が困るような発言ができてしまうんですね。彼らがいうには、言葉と文法は小学生並みで簡単だけど、話の辻褄が合わないとか、話題が飛びまくるとか、例えが適切じゃないとか、話の根拠が怪しいとか、まともな神経では通訳しにくいと困っています。

オレの方が圧倒的にちゃんと見えているんだぜ、という心理的優位を生み出す眼性BA

高岡 話の辻褄が合わないとか、そういうこともヘッチャラなはずです。それはまず基本的にこのセンターの構造からくるんですよ。

 それに加えて、目にかかるBAである「眼性ディレクター」も特徴ですね。世界を双眼鏡で見ているような身体意識をもっているんです。実際に双眼鏡を覗いて見ると遠くが大きく近く見えると同時に視野が狭くなるでしょう。でもトランプの身体意識では、双眼鏡で見ていながら視野が広いんですね。そうすると、あんたたちは知らないだろうが、オレは双眼鏡で何でもちゃんと見えているんだぜという潜在意識が持てるんですよ。しかも視野が広いから、常に心理的に優位でいられる。潜在意識下で、オレの方が圧倒的に見えているんだぜと思っているんです。

――すごい身体意識ですね。だから、あんなに自信満々なんですか。

高岡 そうなんです。中径軸とロート型大径軸そしてこの「眼性ディレクター」があるから、何事に対しても自信満々でいられるんです。普通は自信というのは、その分野での圧倒的な知識とか経験から得られるわけですよね。そんな知識や経験もないであろうに、政治から軍事、金融、教育、医療、福祉、保険から貿易さらに世界情勢や民族まですごい自信のあるような言い方をするでしょう。そうかといって、肚が利いていて動揺しないというところから来る下丹田系の自信でもないわけです。

 この「眼性ディレクター」があると、物事の認識においてそもそも自分は優位に立っているという意識になれちゃうんです。

――恐ろしい勘違いですね。

高岡 もともと「裏転子」などの身体意識がこれだけ発達していると、不動産業界ではやってこられたんですよ。でも、国家の指導者をこのBA構造で突っ走ろうとすると大変ですよ。基本となる「細径軸」「上丹田」が形成されてないので、どの分野についても本当に正しい認識というのが成立し難いですから。

 「はったり」という言葉がありますけど、不動産業界というのは仕事のやり方によっては、世の中にあまたある領域、業界の中でも最もはったりが利く、というでしょう。それであればこそ、この「眼性ディレクター」が強烈に効力を発揮しえたと思うんですよ。でも、アメリカ大統領というと、世界中のあらゆる要素が超複雑に関係するまさに70億人をこす人類のルツボの真っ只中を裁き捌いていく最大の責任を負っているわけで、そんな壮大な条件下でどこまで通用するかというと、このままのBAではハッキリ難しいでしょうね。

――トランプの場合、戦い方の迫力と面白さから支持を広げて大統領になったように見えるんですけど、不動産王レベルのBAで、いつまで大統領として通用するか見ものですね。

高岡 トランプと世界人類にとって最も望ましいことは、彼がアメリカ大統領という環境条件に急激に順応し、BAという本質を徹底改革、急成長させ、真に責任ある世界のリーダーとしての優れた身体意識を構築して、この責務を果たしてくれることなんですけどね。

――本当にその通りですね。ありがとうございました。

ウラジーミル・プーチン(1)へつづく>>



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